大腸がんのセルフチェック|初期症状から原因となる生活習慣まで

大腸がんのセルフチェック|初期症状から原因となる生活習慣まで

大腸がんは、生活習慣や既往歴・家族歴が発症のリスク要因になる疾患で、初期症状がないケースがほとんどです。

そのため、どんな特徴がある人がかかりやすいのかを把握して予防に努めたり、定期検診を受けて早期発見を目指したりすることが大切です。

この記事では、大腸がんになりやすい人の特徴や生活習慣、検査を受けるべき症状のセルフチェック内容や早期発見のポイントなどを紹介します。

気になる症状がある人や、大腸がんの早期発見のために何をすればいいのか知りたい人は参考にしてください。

錦織 英知 先生
監修医師
錦織 英知先生(えさか駅前にしごりおなかとおしりのクリニック)
国立がん研究センター東病院 大腸骨盤外科にて、最先端の大腸・直腸がん手術に多数従事。その後、神戸の神鋼記念病院にて大腸外科医として活躍し、数多くの大腸・直腸がん手術を担当。さらに、大腸・直腸と密接に関わる「排便障害(便秘や便漏れなど)」に対する専門外来を立ち上げ、幅広い患者さんの診療にあたる。

大腸がんの初期症状セルフチェック

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大腸がんには初期症状がほとんどありませんが、がんが進行すると以下のような症状を引き起こします。

  • 便秘
  • 下痢
  • 腹痛
  • 腹部膨満感
  • めまい
  • ふらつき
  • 便が細い
  • 残便感
  • 下血・血便
  • 体重減少

便や排便習慣に変化がみられた場合や、お腹の様子がいつもと違うと感じた場合、何もしていないのに急に体重が減少した場合は要注意です。

これらの症状が出た場合、大腸がんがすでに進行している可能性があります。

もし、これらの症状を放置し始めてから時間が経過していて、今でも症状が続いている人がいれば早急に医療機関を受診してください。

大腸がんになりやすい生活習慣セルフチェック

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大腸がんは、生活習慣がリスク要因となる疾患であるため、以下の生活習慣の特徴がある人は注意が必要です。

  • 赤身肉や加工肉をよく食べる
  • 野菜や果物をあまり食べない
  • 早食いの癖がある
  • 生活リズムが不規則である
  • お酒をたくさん飲む習慣がある
  • 喫煙習慣がある
  • ほとんど運動をしない

肉が中心の偏った食生活をしている人や、飲酒・喫煙の習慣がある人、肥満傾向の人は大腸がんになるリスクが高いとされています。

これらの生活習慣は、大腸がんだけではなくさまざまな疾患を引き起こす原因にもなりえるため、健康のためにも改善に努めましょう。

大腸がんになりやすい人の特徴セルフチェック

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大腸がんになりやすい人には、以下のような特徴がある人もいます。

  • 40歳以上である
  • 家族や親族に大腸がんの既往歴がある
  • 最後に大腸がん検査を受けたのが1年以上前
  • 大腸がんの検査で便潜血検査以外を受けたことがない
  • 大腸ポリープの経過観察中である
  • 糖尿病の診断を受けている

大腸がんは、少なくとも40歳以上になってからの定期検診が強く推奨されますが、家族や血縁者に大腸がんの既往歴がある場合は年齢に関係なく一度検査を受けましょう。

便潜血検査は、まれにポリープやがんがあっても検査結果が陰性になるケースがあるため、精密検査を一度も受けたことがない場合は発見できなかった病変が存在する可能性があります。

また50歳以前に糖尿病の診断を受けている患者さんでは、同じくらいの年齢での大腸がんのリスクが約2倍になり、さらに家族歴がある場合は約7倍も大腸がんのリスクが高まるとされています。

特に2型糖尿病では大腸がんの原因となる慢性的な腸管の炎症がみられる傾向があり、肥満や運動不足、欧米化した食事などの共通したリスク因子が挙げられるため、当てはまる場合は注意が必要です。

大腸カメラ検査を受けるべき症状のセルフチェック

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大腸がんは症状が出る前に発見し、治療を行うことが大切ですが、以下の症状がみられた場合は一度大腸カメラ検査を受けましょう。

  • トイレに行った後、またすぐにトイレに行きたくなることがある
  • 便秘と下痢を繰り返すことが多くなった
  • 普段より排便回数が減った
  • 便が細く、残便感がある
  • 肛門からの出血、または血便がみられる
  • おなかの張りや痛みを慢性的に感じる
  • 食欲が出ず、急激に体重が減少した

これらの症状がある場合は、大腸がんに限らず他の消化器系疾患が潜んでいる可能性があるため、大腸カメラ検査を受けて原因を特定することが大切です。

これらの症状を引き起こす疾患は、放置することで大腸がんのリスクを高める場合があります。

大腸カメラは、病変を採取して病理検査を行えるだけではなく、大腸ポリープや早期の大腸がんの切除もできる方法です。

悪化させないためにも、早めに検査を受けましょう。

大腸がんはどんな病気?

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大腸がんはどんな病気なのか、特徴を以下にまとめました。

特徴
  • 大腸粘膜から発生する悪性腫瘍の総称
  • 遺伝性のものとその他のリスク要因で発症するものがある
  • 早期発見・治療によって完治の可能性が高まる
症状の現れ方
  • 早期では多くのケースで無症状
  • 進行は比較的緩やか(異なる場合もある)
  • 悪化すると便の状態や排便習慣の変化、消化管症状が起こる
発生部位
  • 右側大腸がん:盲腸・上行結腸・横行結腸
  • 左側大腸がん:下行結腸・S字結腸・直腸
深達度による分類
  • Tis:がんが粘膜内に留まり、粘膜下層に及んでいない
  • T1:がんが粘膜下層に浸潤している
  • T2:がんが固有筋層まで浸潤しているが、これを越えていない
  • T3:がんが漿膜下層まで浸潤している
  • T4:がんが漿膜に接している、または破って他臓器まで浸潤している
ステージごとの5年生存率

【結腸がん】

  • ステージ0:93.0%
  • ステージ1:92.3%
  • ステージ2:85.4%
  • ステージ3a:80.4%
  • ステージ3b:63.8%
  • ステージ4:19.9%

【直腸がん】

  • ステージ0:97.6%
  • ステージ1:90.6%
  • ステージ2:83.1%
  • ステージ3a:73.0%
  • ステージ3b:53.5%
  • ステージ4:14.8%

(参照:国立研究開発法人 国立がん研究センター 中央病院「大腸がんのステージ(病期)について」

転移
  • リンパ節転移
  • 血行性転移
  • 腹膜転移

大腸がんは、早期発見で治療の成功率が高まる疾患ですが、放置して発見が遅れると、5年生存率が約15%程度まで低下する恐れがあります。

病変が発生する部位によって症状が異なり、左側にできると便の通過が妨げられ、腹痛・嘔吐・血便などがみられるケースが多く、右側にできると腹部症状が目立たないケースが多いです。

また、転移した部位によっては完治が困難になる場合もあるため、大腸がん検診による早めの発見と対処が重要です。

大腸がん検診の効果的なタイミング

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大腸がん検診は、以下の年齢や頻度で受けるのが効果的です。

年齢

厚生労働省では、40歳以上の人に大腸がん検診として問診及び便潜血検査を受けることを推奨しています。

大腸がんは40歳から発症率が増加する疾患であるため、この年齢まで一度も検査を受けたことがない場合はできるだけ早めに医療機関を受診しましょう。

また大腸カメラを受けたことがない人は、ポリープや早期大腸がんの有無を確認し、適切な検診頻度を定めるためにも一度大腸カメラを受けることをおすすめします。

頻度

厚生労働省では、40歳以上の人に対して年に1回の頻度で大腸がん検診を受けることを推奨しています。検診の結果が陰性であっても数年後にがんにかかる可能性があるためです。

ただし、大腸カメラの検査については以下の頻度で受けるのがよいでしょう。

大腸カメラによる検査頻度 40代 50代
大腸に異常がない場合 3~5年に1回 3年に1回
大腸ポリープが発見された場合 1~2年に1回 1~2年に1回

大腸がんは進行が緩やかながんであるため、一度大腸カメラで異常がみられなかった場合は3〜5年の検査頻度で十分だとされています。

ただし家族や親族に大腸がんに罹患した経験のある人がいる場合、家族性大腸腺腫症と呼ばれる遺伝性の大腸がんになるリスクがあるため、20代のうちに一度検査を受けることが推奨されます。

大腸がんの診断に必要な検査

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大腸がんを診断するためには、以下の検査が必要になります。

便潜血検査

便潜血検査は、2日分の便に含まれる少量の血液を調べる検査です。

基本的に、大腸がんの検査で一番最初に選択される検査方法で、便潜血検査によって陽性が出たらその他の精密検査(大腸カメラ検査や大腸CT検査)を行うのが一般的です。

定期的に受診することで大腸がんによる死亡のリスクを減少させられることが分かっており、国が推奨する検査として自治体の検診や職域検診で広く実施されています。

大腸カメラ検査(大腸内視鏡検査)

大腸カメラ検査(大腸内視鏡検査)は、スコープを肛門から挿入して腸内を直接観察する検査です。

検査精度が高く、小さなポリープやがんをその場で切除したり、組織の一部を採取して腫瘍の良性・悪性を判断したりできます。

一度大腸ポリープを切除した経験がある場合、取り切れないポリープがあったりポリープができやすい体質であったりする可能性があるため、1〜2年のあいだに再検査を受けるのが推奨されます。

大腸CT検査

大腸CT検査(CTコロノグラフィー)は、大腸に空気を注入して膨らませてからCT撮影を行い、がんやポリープを検出する方法です。

検査の不快感や痛みが少なく、身体への負担が少ないため、腸管の癒着がある場合や高齢者のように内視鏡検査を受けるのが困難な場合に適用されます。

健康診断や人間ドックのオプションとして選択できるケースもあります。

バリウム注腸造影検査

バリウム注腸造影検査は、バリウムと空気を用いて大腸のX線画像を撮影する方法です。

大腸がん検診として受けるのであれば、2〜3年の頻度で受けるのが推奨されます。

ただし、大腸CT検査のほうが高精度とされているため、特殊な状態の患者さんに対して選択されるケースが多いです。

腫瘍マーカー

腫瘍マーカーは、がん細胞やその周囲の細胞が産生する物質の濃度を血液から調べる方法です。

がん細胞の数や、がん細胞が作り出す物質の濃度が高くなると、腫瘍マーカーの値は増加します。

がん細胞がなくても他の疾患や生活習慣、内服薬などの影響で値が高くなるケースがあり、反対に早期の大腸がんでは値が低い(正常値)可能性があります。

大腸がんを早期発見・治療するために

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大腸がんは、以下の点に注意して早期発見・治療に努めることが大切です。

定期的に大腸がん検診を受ける

症状がなくても定期的に大腸がん検診を受け、早期発見を目指しましょう。

大腸がんは症状が出た時にはすでに進行しているケースが多く、自覚症状が出てから検査を受けようと考えていると対応が遅れる可能性があります。

40歳を超えていて一度も大腸がん検診を受けていない、または大腸がんや大腸ポリープの家族歴があるなどの特徴に当てはまる人は一度医療機関を受診し、検診の頻度について相談するのがおすすめです。

要精密検査と判定されたら放置しない

便潜血検査で陽性が出たり、要精密検査と判定されたりした場合は、放置せず早めに治療を受けましょう。

大腸がん検診の精密検査で一般的に最初に選択されるのが大腸内視鏡検査ですが、初めて受ける人や恥ずかしい・面倒くさいと感じる人のなかには、検査への抵抗感から先延ばしにしてしまう人もいます。

大腸がんは、早期に発見できれば大腸内視鏡検査をしたその日に治療できる可能性があるため、精密検査が必要になったらすぐに医療機関を受診しましょう。

気になる症状がある場合は早めに受診する

大腸がんが疑われる症状が見られたら、可能なかぎり早い医療機関への相談が推奨されます。

例えば下痢と腹痛の繰り返しが慢性化したり、原因の分からないめまい・ふらつきなどの症状がある場合、大腸がんの可能性がありますが、日常生活に支障をきたさない程度であれば様子を見る人もいるでしょう。

しかし、これらの症状の原因が大腸がんである場合、すでに早急な対応が求められる段階まで病状が進行している可能性があります。

大腸がんを出来るだけ早く発見するためには、考えられる症状を把握して疑わしい症状に気付けることも大切です。

まとめ

大腸がんは、症状が出る前に発見すること、疑わしい症状が見られたら早急に医療機関を受診すること、リスク要因となる生活習慣に気をつけることが大切です。

症状が出た時点ですでにがんが進行しているケースが多いため、定期的な検診と内視鏡検査をしっかり受けることが大切です。

気になるお腹やお尻の症状の検査・治療・経過観察は、ぜひえさか駅前にしごりおなかとおしりのクリニックにお任せください。

当院では、鎮静剤・鎮痛剤や二酸化炭素送気装置を使用し、苦痛を軽減した大腸カメラ検査を行っています。

大腸がんの検査が初めての方も、過去の経験から内視鏡検査がつらいと感じる方も一度お気軽にご相談ください。

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