大腸内視鏡検査は、腸の異常を正確に診断するために欠かせない検査です。正確な結果を得るには、検査前の準備や当日の過ごし方が非常に重要になります。
また、検査後は医師から画像を用いた説明があり、必要に応じて後日あらためて結果を聞く場合もあります。
検査の基本的な流れは次の通りです。
- 外来で検査予約・説明を受ける
- 検査前日に食事制限と下剤の準備
- 検査当日に下剤を服用し、腸を洗浄
- 内視鏡検査(必要に応じてポリープ切除)
- 検査後に医師から結果の説明を受ける
本記事では、それぞれのステップでの注意点や準備方法をわかりやすく解説しています。初めての方でもスムーズに検査を受けられるよう、ぜひ参考にしてください。
大腸内視鏡検査の流れ

大腸内視鏡検査の精度を高めるためには、腸内を完全にきれいにする『前処置』が欠かせません。
下剤を使って腸内を洗浄し、便が残らない状態で検査を行う必要があります。
そのため、検査前日から当日にかけての過ごし方や準備が重要です。
大腸内視鏡検査は以下のような流れで行われます。
ここでは上記の流れに沿って、それぞれ解説します。
1.検査予約
大腸内視鏡検査を受けるには、まず外来を受診して医師の診察を受ける必要があります。
診察では検査の目的や流れ、注意事項について説明、服用中の薬についての確認などが行われます。
特に血液をサラサラにする薬を服用している場合は、検査前に休薬が必要なこともあるため、お薬手帳を持参するとスムーズです。
また検査の予約日が決まると、前処置として使用する下剤の受け取りや、在宅洗浄・院内洗浄のどちらにするかといった選択も行われます。
2.検査前日
検査前日は、腸内に食べ物を残さないよう、消化の良い食事を心がける必要があります。
検査食を使用するか、脂っこいものや繊維の多い食材を避けた食事を摂るようにしましょう。
夕食は遅くとも21時までに済ませ、その後は水分補給をしっかり行います。
早めに就寝し、翌日の洗浄に備えることも大切です。
夜間も水やスポーツドリンクでこまめに水分を摂りましょう。
3.検査当日・準備
検査当日は朝から絶食で、指定された時間に下剤(腸管洗浄液)を飲み始めます。
通常1〜2リットルを1〜2時間かけて分けて服用し、5〜10回ほど排便を繰り返すと、透明で黄色の水様便になります。
この洗浄の方法には『在宅洗浄法』と『院内洗浄法』の2種類ありますが、どちらを選ぶかは事前に医師と相談して決定しましょう。
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在宅洗浄法 |
院内洗浄法 |
メリット |
慣れた環境でリラックスして下剤を飲める |
わからない点や不安な点があればすぐに医療スタッフに相談できる
体調不良になった時にすぐに対応できる |
デメリット |
気軽に医療スタッフに相談できない
急に気分が悪くなった時にすぐに対応できない |
クリニックによっては他の患者と同室で下剤を飲まなくてはいけない |
在宅洗浄法は、自宅で自分のペースで下剤を服用できるためリラックスして準備できますが、体調不良時に医療スタッフにすぐ相談できないという不安があります。
院内洗浄法は、医療機関で下剤を服用しながらスタッフのサポートを受けられるのがメリットです。
ただしクリニックによっては他の患者さんと同室になることもあるため、気になる方もいるかもしれません。
えさか駅前にしごりおなかとおしりのクリニックでは、患者さんがリラックスして過ごせるよう下剤内服室はトイレ付きの個室になっています。
また便秘の方には、便秘の程度に応じた前処置薬を選択し内服いただくように配慮しています。
4.検査
下剤の効果によって腸内が綺麗になったことを確認できたら、検査に入ります。
受付後は検査着に着替え、貴金属類を外してストレッチャーに横になりましょう。
鎮静剤や鎮痛剤を点滴で投与され、リラックスした状態で検査が行われます。
検査では肛門から内視鏡が挿入され、医師がモニターを見ながら腸内の状態を細かく観察します。
検査時間は、観察のみであれば15分程度が目安です。
ポリープの切除などを行う場合は、追加で15〜30分ほどかかることもあり、必要に応じて生検(組織採取)も行われます。
5.検査後
検査が終了すると、リカバリールームで30分から1時間ほど安静にして体調の回復を待ちます。
回復後には、撮影された画像をもとに医師から検査結果の説明を受けます。
ポリープの切除や組織検査をした場合は、後日再度来院して詳しい結果を聞くことになるでしょう。
特に制限がなければ検査後の食事は通常通り可能ですが、ポリープ切除を行った場合は数日間、消化の良い食事を心がけるよう指導されます。
水分補給も忘れずに行いましょう。
大腸内視鏡検査前日の注意点

大腸内視鏡検査前日の注意点として、以下の5つが挙げられます。
- 夕食は21時までに済ませる
- 検査前日は消化に良い食事を摂取する
- 消化に良い調理方法を選ぶ
- アルコールはなるべく控える
- 内服薬の服用は医師に相談する
ここでは上記5つの注意点についてそれぞれ解説します。
夕食は21時までに済ませる
検査前日の夕食は、遅くとも21時までに済ませることが推奨されています。
遅い時間の食事は消化が間に合わず、腸内に食べ物が残ってしまう可能性があるためです。
消化が不十分な状態で下剤を飲んでも、便がしっかり排出されず、腸の奥まできちんと観察できなくなる恐れがあります。
水分摂取は制限されていないため、水やお茶をこまめに飲みながら早めに就寝しましょう。
検査前日は消化に良い食事を摂取する
前日の食事は、消化の良い食品を選ぶことが大切です。
食物繊維が多い野菜や海藻類、キノコ類などは避け、腸に残りにくいものを意識しましょう。
検査前日に食べていいもの・悪いものを簡単にまとめると以下の通りです。
|
食べていいもの |
食べてはいけないもの |
ご飯類 |
白米、おかゆ、もち |
胚芽米、発芽玄米、雑穀米 |
パン類 |
食パン、ロールパン、フランスパン、米粉パン、蒸しパン、
卵サンド、ツナサンド |
全粒粉、胚芽、ふすま、ライ麦のパン、あんパン、ジャムパン、揚げパン、クロワッサン、デニッシュパン、バーガー、ピザ |
麺類 |
そうめん、うどん、ビーフン、フォー |
そば、ラーメン、パスタ、中華麺 |
肉類 |
鶏むね肉(皮なし)、鶏もも肉(皮なし)、鶏ささみ、豚ひれ肉、豚もも肉、牛ひれ肉、牛もも肉、牛肩肉 |
鶏手羽肉、鶏皮、豚バラ肉、牛バラ肉、ロース、サーロイン肉、ソーセージ、ベーコン、ホルモン |
魚介類 |
脂肪の少ない白身魚(タラ、タイ、カレイなど)、魚のすり身(はんぺん、ちくわ、かまぼこなど) |
アジ、サバ、サンマ、イワシ、ブリ、ウナギ、干物、貝類、タコ、イカ、エビ、カニ |
野菜・果物・いも類 |
長いも、じゃがいも、バナナ、りんご |
葉物野菜、根菜類、種のある果物類(スイカ、メロン、イチゴ)、きのこ、じゃがいも・長いも以外のいも |
その他 |
卵、豆腐、卵豆腐、高野豆腐、湯葉、豆乳、プリン、ゼリー、飴 |
海藻類、薬味類、豆類、こんにゃく、ふりかけ、ごま、ナッツ類、コーンフレーク、スナック菓子、ケーキ、こんにゃくゼリー |
検査前日の食事は、柔らかく煮た白身魚や鶏のささみ、豆腐などが適しています。
特に便秘気味の方や以前の検査で腸内に残渣が多かった方は、2~3日前から食物繊維の多い食事を控えるとより効果的です。
また白米やパンなどの炭水化物は胃に長く留まる傾向があるため、夕食は控えめにするとよいでしょう。
消化に良い調理方法を選ぶ
同じ食材でも、調理法によって消化のしやすさは変わります。
検査前日は、以下のような調理法を意識しましょう。
これらの方法は脂肪分が落ちやすく、胃腸への負担を軽減できます。
一方で、次のような調理法は避けるべきです。
たとえば、
- 鶏肉は脂肪の少ない部位を茹でる
- 白身魚は蒸して食べる
- 食材は細かく刻む・やわらかく煮る
ことで、さらに腸にやさしくなります
検査精度を高めるためにも、調理法に配慮した食事を心がけましょう。
アルコールはなるべく控える
クリニックによっては少量であれば許容される場合もありますが、検査前日のアルコール摂取はなるべく控えましょう。
アルコールは脱水を引き起こしやすく、下剤の効果にも影響を与えることがあります。
また胃腸に刺激を与え、腸管の動きに影響する可能性もあるため、特に消化器系に不調がある方は避けた方がよいでしょう。
どうしても飲む場合は少量にとどめ、水分を多めに補給するように心がけてください。
検査前日にアルコールを摂取しても良いかは個人の体調や薬の種類によっても異なるため、事前に医師に確認することをおすすめします。
内服薬の服用は医師に相談する
普段服用している薬がある場合は、必ず事前に医師に相談してください。
特に注意が必要なのは、抗血栓薬(抗凝固薬や抗血小板薬)などの血液をサラサラにする薬です。
これらの薬は検査時の出血リスクを高めるため、一時的に休薬が必要な場合があります。
また、糖尿病の治療薬も検査前日の服用可否が変わるため注意が必要です。
上記以外の内服薬は基本的に継続して問題ないケースが多いですが、自己判断で服用を中止することは避けましょう。
お薬手帳を持参するなどして、診察時に服用中の薬を正確に伝え、医師の指示に従うことが大切です。
大腸内視鏡検査後の注意点

大腸内視鏡検査後の注意点として、以下の4つが挙げられます。
- 鎮静剤を使用した場合は運転や激しい運動ができない
- ポリープを切除した場合の食事の注意点
- ポリープを切除した場合の生活面の注意点
- 強い痛みや下血などの症状が出たらすぐに病院に連絡する
ここでは上記4つの注意点についてそれぞれ解説します。
鎮静剤を使用した場合は運転や激しい運動ができない
大腸内視鏡検査で鎮静剤を使用した場合、その日の運転は一切禁止となります。
車だけでなく、バイクや自転車の運転も同様です。
検査当日は公共交通機関を利用するか、家族や友人などに送迎を頼みましょう。
また検査後は激しい運動も避けるべきです。
特にジョギングやゴルフ、テニスといったお腹に力が入る運動は控える必要があります。
検査後はクリニック内で1時間程度安静にし、その後も自宅でゆっくり過ごすようにしましょう。
ポリープを切除した場合の食事の注意点
検査中にポリープを切除した場合、腸の中に小さな傷ができている状態になります。腸を刺激しないよう、食事内容には数日間注意が必要です。
◯控えるべきもの(数日間)
- 刺激の強い食べ物(唐辛子・胡椒などの香辛料)
- 脂っこい料理(揚げ物、脂身の多い肉類など)
- アルコール
- カフェインを含む飲料(コーヒー・緑茶など)
これらは腸に負担をかけ、出血や腹痛のリスクを高める恐れがあります。
◯食べてよいもの(回復期に適した食事)
- 柔らかく煮た野菜
- 白身魚(蒸す・茹でる調理が理想)
- お粥やうどん
- 豆腐、卵など消化の良いタンパク源
食事の再開は検査後1時間ほど経ってから可能ですが、①「最初は少量から開始する」②「体調や腹部の違和感に注意しながら徐々に戻す」ことを意識してください。
腸を労わる食生活を心がけ、トラブルのない回復を目指しましょう。
ポリープを切除した場合の生活面の注意点
ポリープを切除した場合、腸内にできた傷を刺激しないようにするため、生活面でもいくつか注意が必要です。
- 激しい運動や力を入れる作業は控える
- 長風呂や温泉は控える
- 旅行や出張を控える
特に腹圧がかかる動作(重い荷物を持つ、ジョギング、筋トレ、ゴルフなど)は出血のリスクがあるため注意が必要です。
また、入浴はシャワーで済ませ、長風呂や温泉は避けましょう。
旅行や出張など、長時間の移動を伴う予定も控えた方が安心です。
何か異変を感じた際には、早めに医療機関に連絡しましょう。
強い痛みや下血などの症状が出たらすぐに病院に連絡する
検査後に気をつけたい症状として、強い腹痛や大量の下血(赤い血便)、吐き気、めまいなどが挙げられます。
これらの症状は、ポリープ切除後の出血や腸の穿孔といった合併症のサインである可能性があります。
少量の出血や軽い腹部の張りは一時的なものであることが多いですが、症状が強く持続する場合や急激に悪化する場合は、すぐに検査を受けた医療機関へ連絡してください。
夜間や休日などで連絡が取れない場合は、地域の救急相談窓口(#7119など)を活用するのも一つの方法です。
安全のため、異常を感じたらためらわずに医師の判断を仰ぎましょう。
まとめ
大腸内視鏡検査の精度を高めるためには、事前の準備が非常に重要です。
前日の食事内容や下剤の服用方法、当日の過ごし方を正しく守ることで、正確な診断が可能になります。
また、検査後も体に負担をかけないように注意が必要です。
特に鎮静剤の使用やポリープ切除があった場合は、食事面・生活面で制限があるため、医師の指示に従いましょう。
えさか駅前にしごりおなかとおしりのクリニックでは、院内で快適に下剤を服用できるトイレ付き個室を用意しています。
他の患者さんと顔を合わせることなく検査の準備ができるため、気になる方はぜひ当院まで気軽にご連絡ください。
また便秘の方には、便秘の程度に応じた前処置薬を選択し、内服いただくように配慮しています。