左下腹部を押すと痛みを感じる場合に考えられる病気は、消化器系、泌尿器系、婦人科系、男性特有の病気など多岐にわたります。
大腸憩室炎や尿路結石、卵巣の病気など重篤な疾患が隠れていることもあり、放置しておくのは危険です。
この記事では、左下腹部を押すと痛いときに考えられる病気について解説します。
それぞれの病気の特徴や受診目安、検査方法などもまとめているため、ぜひ参考にしてみてください。
左下腹部を押すと痛みを感じる場合に考えられる病気は、消化器系、泌尿器系、婦人科系、男性特有の病気など多岐にわたります。
大腸憩室炎や尿路結石、卵巣の病気など重篤な疾患が隠れていることもあり、放置しておくのは危険です。
この記事では、左下腹部を押すと痛いときに考えられる病気について解説します。
それぞれの病気の特徴や受診目安、検査方法などもまとめているため、ぜひ参考にしてみてください。
左下腹部を押すと痛いときに考えられる消化器系の病気として、以下が挙げられます。
ここでは上記8つの病気についてそれぞれ解説します。
便秘は「排便が順調に行われない状態」を指し、排便回数が減るだけでなく、硬い便・残便感・腹部の張りなどを伴うケースも多くあります。
便秘による痛みはS状結腸がある左下腹部に集中しやすく、鈍い痛みや圧迫感として感じられることが多いです。
痛みは食後に強くなったり、ガスが溜まったときにチクチクした痛みを伴ったりします。
便秘の原因は食物繊維不足や水分不足、運動不足、ストレス、薬の副作用などさまざまです。
便秘が長期間続いたり腹痛や吐き気を伴ったりする場合は、医療機関を受診しましょう。
腸閉塞は腸の中で食べ物や消化液の流れが遮断されてしまう病気で、手術後の癒着や腫瘍、炎症が原因で発症することがあります。
波のように強弱を繰り返す痛みが断続的に起こるのが特徴です。
特にへそ周辺や腹部全体に痛みが広がることが多く、時間の経過とともに吐き気、嘔吐、腹部膨満感、便やガスが出なくなるといった症状が現れます。
症状が進むと腸の壊死や穿孔につながるなど、命に関わる状態へと進行することもあるため、疑わしい症状があればすぐに受診が必要です。
大腸憩室炎は、大腸の壁の一部が袋状に外に飛び出た『憩室』に便などが溜まり、細菌感染を起こして炎症を伴う病気です。
症状としては、左下腹部に鋭く持続的な痛みが現れるのが特徴です。
そのほかにも発熱や全身の倦怠感、吐き気、嘔吐を伴うこともあります。
憩室の数や炎症の程度によっては痛みが強く、腸閉塞や穿孔を引き起こすリスクもあります。
押したときに強く痛む場合や発熱がある場合は、速やかに医療機関を受診しましょう。
大腸がんは進行するまで症状が出にくい病気ですが、症状が現れ始めると、血便、便通異常(便秘・下痢の繰り返し)、左下腹部の鈍い痛みなどがみられます。
痛みは、がんが大きくなり腸の通過を妨げるようになると出現し、持続的な腹痛や便が細くなるなどの変化も生じます。
がんの部位によって痛みの場所は異なりますが、S状結腸や直腸が関与するケースでは、左下腹部に集中しやすいです。
さらに進行がんでは、貧血や体重減少、食欲不振、腹部膨満感など全身症状も目立つようになります。
がんを早期発見するためには、定期的に検査を受けることが大切です。
炎症性腸疾患は腸管に慢性的な炎症を起こす病気で、代表的なものに潰瘍性大腸炎とクローン病があります。
症状は腹痛、下痢、血便が中心で、痛みは右下腹部や左下腹部、あるいはお腹全体に広がることもあります。
クローン病では小腸から大腸まで広範囲に病変ができるため、痛む場所も個人差が大きいのが特徴です。
腹痛は鈍い痛みとして持続することが多く、慢性的に繰り返されます。
また発熱や体重減少、全身の倦怠感を伴うこともあります。
痛みの出方に個人差があるため、症状が続く場合は早めに医療機関を受診しましょう。
虚血性腸炎は、大腸への血流が悪くなることで発症する病気です。
突然起こる腹痛が主な症状で、左下腹部に強い痛みが出るケースが多いです。
そのほかにも吐き気や嘔吐、下痢、血便が見られるケースもあります。
発症から数日で自然に軽快することもありますが、重症例では入院治療が必要となります。
S状結腸軸捻転は大腸のS状結腸が腸間膜を軸にしてねじれてしまう病気で、寝たきりの高齢者や精神疾患を持つ人に多く発症します。
突然、激しい腹痛とともに腹部膨満感や吐き気、嘔吐が起こり、ショック状態に陥ることがあるのが特徴です。
痛みの部位は左下腹部に限らず、お腹全体に広がることもあり、ねじれた腸が血流を遮断することで短時間で症状が悪化することがあります。
放置すると腸が壊死したり穿孔したりする危険があるため、緊急処置が必要です。
過敏性腸症候群は、明確な器質的異常がないにもかかわらず、腹痛や便秘・下痢などの便通異常が長期間続く病気です。
痛みは左下腹部に多く見られ、重だるい感じの痛みが断続的に起こるのが特徴です。
特にストレスや緊張によって症状が悪化し、排便後に痛みが軽くなる傾向があります。
痛みは日中に多く、睡眠中はほとんど感じません。
症状は数週間から数ヶ月にわたって続くこともあり、生活の質を下げる要因になります。
食事療法やストレス管理によって改善が期待されますが、症状が強い場合は薬物療法が行われることもあります。
左下腹部を押すと痛いときに考えられる泌尿器系の病気として、以下が挙げられます。
ここでは上記2つの病気についてそれぞれ解説します。
尿路結石は、腎臓で形成された石が尿管や膀胱などを移動する際に強い痛みを引き起こす病気です。
左または右の下腹部から側腹部にかけて、刺すような激痛や波のように強弱を繰り返す痛みが急に出現するのが特徴です。
結石が粘膜を傷つけると血尿が見られたり、痛みに伴って吐き気や嘔吐を生じることもあります。
膀胱まで石が下りてくると、頻尿や残尿感、排尿時の痛みを伴うこともあり、場所に応じて症状が変化します。
尿路感染症は尿の通り道に細菌が入り込み、炎症を起こすことで発症する病気です。
よく見られるのは膀胱炎で、排尿時のしみるような痛みや残尿感、下腹部の鈍い痛み、頻尿といった症状が現れます。
痛みの場所は主に左右どちらかのわき腹や背部に生じ、数日間持続することが多いです。
特に女性は感染リスクが高いため注意が必要です。
放置すれば重症化し、腎臓にまで影響を及ぼすこともあるため、早期対処が重要となります。
左下腹部を押すと痛いときに考えられる女性特有(婦人科系)の病気として、以下が挙げられます。
ここでは上記6つの病気についてそれぞれ解説します。
子宮内膜症は本来子宮内にのみ存在するはずの子宮内膜が、卵巣や腹膜、腸などの他の部位に発生してしまう病気です。
腹膜や卵巣にできた子宮内膜も生理周期の影響を受けて出血するため、炎症を伴って痛みを引き起こします。
痛みは鈍く重たい感じが特徴で、下腹部や腰にかけて広がることがあります。
異常な出血や炎症、痛みなどが起こり、さらに生理痛が悪化するのも大きな特徴です。
生理時以外にも下腹部に鈍痛や違和感を感じることがあるため、進行するほど日常生活に支障をきたす恐れがあります。
慢性的な症状が続くようなら、婦人科の受診が必要です。
子宮筋腫は子宮の筋層にできる良性の腫瘍で、30代以上の女性に多く見られるものです。
小さいうちは無症状のことが多いですが、筋腫が大きくなってくると下腹部の圧迫感や鈍い痛みを感じるようになります。
月経時には痛みが強まり、生理痛が重くなる、出血量が増える、貧血を起こすといった症状を伴うことがある点が特徴です。
腫瘍の大きさや症状の程度に応じて、治療の必要性が判断されます。
卵巣腫瘍は卵巣にできる腫れやしこりの総称で、良性から悪性までさまざまなタイプがありますが、多くは良性です。
初期にはほとんど自覚症状がないことが多いですが、腫瘍が大きくなると周囲の臓器を圧迫し、下腹部に鈍痛や張りを感じるようになります。
痛みの性質が急変した場合や下腹部に違和感が長く続く場合は、早めに婦人科を受診しましょう。
卵巣茎捻転とは、卵巣と子宮をつなぐ部分がねじれてしまった状態です。
卵巣腫瘍などが大きくなることで重みが加わり、突然ねじれが起こると考えられています。
痛みは突然現れ、強く刺すような鋭い痛みが片側の下腹部に集中します。
痛みは持続的で、急速に悪化するのが特徴です。
さらに嘔吐や吐き気、発熱、不正出血を伴う場合もあります。
完全にねじれてしまうと卵巣が壊死するため、発症時はすぐに医療機関を受診しましょう。
卵巣出血は、排卵後や黄体期に卵巣内の血管が破れて出血することで発症します。
突然起こる下腹部の鋭い痛みが主な症状で、出血した卵巣側に強く現れるのが特徴です。
軽度の出血では局所的な痛みにとどまりますが、出血量が多い場合は下腹部全体に痛みが広がり、吐き気や嘔吐、下痢などを伴います。
さらに重症化すると血圧低下や顔面蒼白、冷汗などのショック症状をきたすことがあり、緊急処置が必要となります。
子宮外妊娠は、受精卵が本来の子宮内膜ではなく、卵管や卵巣、腹腔などに着床してしまう状態です。
生理の時期ではないのに茶色っぽいおりものがみられる、下腹部・骨盤・首あたりが痛むなどの症状が現れます。
痛みは着床部位によって異なりますが、特に卵管に着床した場合、妊娠の進行とともに下腹部に強烈な痛みが生じることがあります。
さらに卵管が破裂すると大量出血を起こし、命に関わる危険性もあるため注意が必要です。
妊娠の可能性がある場合には、早めに婦人科を受診しましょう。
左下腹部を押すと痛いときに考えられる男性特有の病気として、以下が挙げられます。
ここでは上記2つの病気についてそれぞれ解説します。
前立腺炎は前立腺に炎症が起こる病気で、若年〜中年の男性に多く見られます。
細菌感染による『急性前立腺炎』と原因不明の『慢性前立腺炎』に分類されます。
主な症状は下腹部や睾丸と肛門の間の鈍痛や灼熱感、頻尿、排尿時の痛みなどです。
特に排尿開始時に痛みが走ることがあり、ジワジワとした圧迫感やムズムズ感が長時間続くのが特徴です。
慢性化すると症状が断続的に現れ、生活の質が大きく低下する恐れがあります。
精巣上体炎は副睾丸(精巣上体)に炎症が起こる病気で、性感染症や尿路感染症が原因となることが多いです。
『急性型精巣上体炎』と『慢性型精巣上体炎』の2種類があり、急性の場合は片側の陰嚢が突然腫れあがり、ズキズキとした強い痛みが精巣から下腹部にかけて現れます。
全身症状として、38℃以上の発熱や悪寒、全身の倦怠感を伴うことも少なくありません。
慢性精巣上体炎では陰嚢の腫れは目立たないことが多く、不快感や鈍痛が長期間持続するのが特徴です。
いずれの場合も早期治療が重要のため、上記のような症状が現れたら医療機関を受診しましょう。
以下のような症状がある場合は、すぐに医療機関を受診しましょう。
発熱や血便、頻尿、吐き気などの症状が伴う場合は、消化器系・泌尿器系・婦人科系の疾患が疑われます。
受診する診療科の目安は以下を参考にしてみてください。
診療科 | 症状 |
---|---|
内科・消化器内科 | 左下腹部の痛みや違和感、吐き気、嘔吐、発熱など |
泌尿器科 | 左下腹部の痛みや違和感、排尿時の痛み、頻尿、残尿感など |
婦人科 | 生理前や生理中に似た症状、不正出血など |
痛みが強く動けない、何度も吐いている、血便があるといった症状は緊急性が高いため、時間帯に関係なく救急外来や夜間診療所の受診を検討しましょう。
また、受診時には「痛みの場所」「痛みの種類」「いつからどのように痛むか」などを記録しておくと、診断がスムーズになります。
痛みが軽くても、数日続く場合は放置せず、必ず医療機関に相談しましょう。
下腹部痛の検査方法は主に以下の4つです。
ここでは上記4つの検査方法についてそれぞれ解説します。
血液検査は、体内で起こっている炎症や感染の有無を確認する検査です。
特に白血球数やCRP値の上昇は、憩室炎や虫垂炎といった消化管の炎症性疾患の存在を示す指標となります。
また貧血や肝臓・腎臓機能の異常、電解質異常なども確認でき、全身状態の把握にも役立ちます。
大腸カメラ検査は、下腹部の痛みが大腸の異常によるものである場合に有効です。
スコープを肛門から挿入し、大腸全体を直接観察することで、ポリープ、炎症、がん、憩室の有無などを詳細に確認できます。
便秘や下痢が続く、血便がある、左下腹部に鈍痛があるといった症状がある場合には、大腸カメラによる早期の検査が推奨されます。
必要に応じて検査中にポリープを切除することも可能です。
鎮静剤を使えば眠っている間に検査が終わるため、苦痛が少なく済むのも大きな特徴です。
腹部超音波検査は、体外から超音波を当てて臓器の状態をリアルタイムに確認する検査です。
腸管の動き、腎臓、膀胱、肝臓、膵臓、卵巣などの構造や血流異常を調べるのに役立ちます。
検査は10〜15分程度で終わり、痛みや被曝もなく安全性が高いのが特徴です。
特に女性の婦人科系の異常や、泌尿器系の病変の有無を確認するためによく行われます。
気体が多い部分や骨の内部は見えにくいという制限はありますが、患者さんにかかる負担が少なく、気軽に受けやすい検査です。
腹部レントゲン検査は、腸内ガスや便の状態、小腸や大腸の拡張の有無などを確認する検査です。
特に腸閉塞の疑いがある場合に有効です。
検査は短時間で終わり、被ばく量も少ないため、初期診断によく使用されます。
腹部CT検査は、X線とコンピューター処理を用いて腹部内の臓器(肝臓、膵臓、腎臓、脾臓、腸など)や血管、リンパ節の状態を詳細に画像化する検査です。
腫瘍、炎症、出血、結石、感染症などの病変を高精度に描出でき、診断や治療方針の決定に役立ちます。
検査時間は数分程度と短く、必要に応じて造影剤を静脈から投与し、血流や臓器の性質をより鮮明に観察することもあります。痛みはなく、外来でも実施可能です。
左下腹部を押すと痛みがある場合、考えられる病気は消化器系・泌尿器系・婦人科系など多岐にわたります。
痛みの性質やそれに伴う症状によって、どの病気であるかを見極めなくてはいけません。
なかには重症化すると命に関わる病気もあるため、特に発熱や血便、嘔吐、排尿障害などを伴う場合はすぐに医療機関を受診しましょう。
えさか駅前にしごりおなかとおしりのクリニックは、肛門外科・消化器内科・胃腸科の診療を行っています。
内視鏡検査やCT検査など専門的な診療を行っているため、下腹部痛でお悩みの方はぜひ当院までご相談ください。