大腸内視鏡検査の下剤がつらい理由は?つらさを軽減するポイントも解説

大腸内視鏡検査の下剤がつらい理由は?つらさを軽減するポイントも解説
錦織 英知 先生
監修医師
錦織 英知先生(えさか駅前にしごりおなかとおしりのクリニック)
国立がん研究センター東病院 大腸骨盤外科にて、最先端の大腸・直腸がん手術に多数従事。その後、神戸の神鋼記念病院にて大腸外科医として活躍し、数多くの大腸・直腸がん手術を担当。さらに、大腸・直腸と密接に関わる「排便障害(便秘や便漏れなど)」に対する専門外来を立ち上げ、幅広い患者さんの診療にあたる。

大腸内視鏡検査を受けた方の多くが「検査よりも下剤がつらかった」と口にします。大量の下剤を飲むこと・頻繁な排便・お腹の不快感・味の問題などが主な理由です。しかし、近年では種類を選べたり、個室で服用できたりと、負担を軽くする方法も増えてきました。

本記事では、下剤がつらいと感じる原因を明らかにし、その不安を軽減するための具体的な工夫を紹介します。

この記事でわかること

  • 大腸内視鏡検査で下剤が必要な理由とその重要性
  • 下剤が「つらい」と言われる4つの主な原因
  • 症状を和らげるための6つの具体的な対策
  • 飲みきれないときの工夫とコツ
  • 下剤の種類と特徴の比較一覧
  • 下剤に関するよくある質問とその対応策

下剤への不安を減らし、検査を安心して受けるためのヒントをまとめています。

大腸内視鏡検査前に下剤を服用しなければいけない理由

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大腸内視鏡検査では、腸内を観察するために事前の腸管洗浄(下剤の服用)が必須です。これは単なる準備ではなく、検査の精度そのものを左右する重要な工程です。

◎下剤を飲む目的

  • 腸内を空にして便や内容物を完全に除去するため
  • 腸壁全体をくまなく観察できるようにするため
  • ポリープや炎症、がんの見落としを防ぐため

◎洗浄が不十分だとどうなるか

  • 便に隠れて病変が見えにくくなる
  • ポリープの発見率が下がる
  • 検査中に再度洗浄が必要になることもある

腸内の洗浄状態は検査の精度に直結し、「アロンチックスケール」という指標で評価されます。中でもスケール④〜⑤の「清浄」とされる状態では、腫瘍の発見率が約2倍に向上すると報告されています。

特に「鋸歯状病変」は便に隠れやすく、洗浄状態によって見逃されるリスクが大きく変わるため、下剤による腸内洗浄は極めて重要な工程です。

検査の質は「医師の技術力」と「腸の清浄度」の両方によって決まります。医師選びは患者側では限界がありますが、腸をきれいにする準備は患者自身でしかできないことです。

正確な診断と早期発見のためにも、下剤の正しい服用は最も重要なステップの一つといえます。

大腸内視鏡検査の下剤がつらいと言われる理由

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大腸内視鏡検査の下剤がつらいと言われる理由は以下の4つです。

  • 大量の液体を飲まなければいけないため
  • 頻繁に排便するため
  • 腹痛やお腹の不快感を感じることがあるため
  • 味が美味しくないため

ここでは上記4つの理由についてそれぞれ解説します。

大量の液体を飲まなければいけないため

大腸内視鏡検査で使う下剤は、通常の便秘薬とは異なり、腸内をまるごと洗い流す目的で服用します。

そのため2L前後の大量の腸管洗浄液を一定時間内に飲まなければなりません。

この量は体に負担がかかるうえ、お腹が張って苦しくなったり、飲みきるだけで疲れてしまったりする人も多くいます。

特に味に慣れていない初回の受診者や水分摂取が苦手な方にとっては、大きなハードルになるでしょう。

最近では錠剤タイプや飲む量を分けられるタイプも登場していますが、依然として「大量に飲むこと」は変わらないため、「下剤がつらい」と言われる原因の一つとなっています。

頻繁に排便するため

下剤を服用すると、短時間に何度もトイレに行く必要があります。

通常は5~10回程度の排便が必要で、排便のたびに腸内の状態が液状に近づいていきます。

この頻繁な排便が、患者さんにとっては負担となることがあるのです。

また自宅で服用している場合は、外出時や移動中に急な便意に襲われる不安も重なり、精神的にもストレスを感じる方が多いです。

さらに、何度もトイレに行くことで肛門周辺の肌が荒れたり、ヒリヒリした痛みを感じたりすることもあります。

肌荒れや痛みが強い場合は、検査前や検査後に医師に相談してみるとよいでしょう。

腹痛やお腹の不快感を覚えることがあるため

下剤を服用することで、腹痛や腹部に不快感を覚える場合があります。

特に腸が敏感な方や体調が優れないときには、強い痛みや吐き気を訴えることもあり、これが大きなストレスになるのです。

また下剤による体液の排出で脱水気味になったり、気分が悪くなったりする方もいます。

こうした症状は必ずしもすべての人に現れるわけではありませんが、過去に不快な経験をした方は検査そのものへの抵抗感を強める一因となります。

つらさを軽減するためには、あらかじめ医師に相談し、体質に合った下剤を処方してもらうことが大切です。

味が美味しくないため

下剤のもう一つのつらさは、その味にあります。

腸管洗浄液の多くは薄い塩味やスポーツドリンク風、オレンジやレモン風味など工夫されています。

しかし塩化ナトリウムやクエン酸マグネシウムなどの成分による独特な風味や苦味があり、どうしても飲みにくいと感じる方が多いです。

2Lという量を飲み切るうえで、この「味に耐える」という行為も心理的な負担になります。

飴を舐めながら飲む、水で薄めながら分けて飲むなど、少しでも飲みやすくする工夫を取り入れるとつらさを軽減できる可能性があります。

大腸内視鏡検査の下剤のつらさを楽にするポイント

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大腸内視鏡検査の下剤のつらさを楽にするポイントは以下の6つです。

  • 下剤の種類を選べるクリニックを選ぶ
  • トイレ付きの個室のあるクリニックを選ぶ
  • 下剤の味を変えながら飲む
  • 前日と当日の2日に分けて下剤を飲む
  • リラックスした状態で下剤を飲む
  • 前日の食事内容に注意する

ここでは上記6つのポイントについてそれぞれ解説します。

下剤の種類を選べるクリニックを選ぶ

【ポイント】

  • 下剤の種類により味・量・効き方が異なる
  • 味が苦手・量が多い・効果が遅いなどの悩みに対応可能
  • 複数の下剤から選べるクリニックを選ぶのが安心

下剤にはさまざまな種類があり、味の好みや持病との相性、効果発現のタイミングなどが異なります。たとえば、「2Lも飲めない」「味が苦手」などの不安がある場合でも、選択肢があれば自分に合った方法を選べます。クリニックの公式サイトに取り扱い下剤が記載されていることもあるため、事前に確認しておきましょう。

トイレ付きの個室のあるクリニックを選ぶ

【ポイント】

  • 周囲を気にせず服用と排便ができる
  • 待ち時間も快適に過ごせる環境が整っている
  • 精神的な負担が軽くなる

下剤服用後は頻繁にトイレに行く必要があるため、トイレ付き個室のあるクリニックではプライバシーを保ちながら過ごせます。テレビやWi-Fiが整備されている部屋もあり、ストレスを感じずに過ごせる点がメリットです。落ち着いた空間があることで、検査前の緊張もやわらげることができます。

下剤の味を変えながら飲む

【ポイント】

  • 飴をなめながら飲む
  • 冷やして風味を調整する
  • スポーツドリンクなどで薄める(※医師の確認が必要)

苦手な味の下剤でも、飴や冷水、飲み方の工夫でかなり飲みやすくなります。スポーツドリンクや水で薄めることが可能な下剤であれば、味を変えて負担を軽減できます。ただし、混ぜてよい飲料かどうかは必ず医師に確認しましょう。味の変化だけでも心理的負担が大きく減ります。

前日と当日の2日に分けて下剤を飲む

【ポイント】

  • 一度に大量に飲む必要がなくなる
  • 前日から準備を進められる
  • 入院サポート付きのクリニックも選択肢

一度に大量の下剤を飲むのが苦手な方には、前日と当日に分けて服用する方法が有効です。体調や生活スタイルに合わせて、医師と相談のうえで服用時間を調整できます。前日からのサポート体制があるクリニックでは、食事管理やトイレの利用環境も整えられており、安心して準備できます。

リラックスした状態で下剤を飲む

【ポイント】

  • 音楽やテレビなどで気を紛らわせる
  • 落ち着いた場所で服用する
  • 不安な場合はサポート環境のある院内での服用も視野に

緊張や不安は下剤の飲みにくさを増大させる要因になります。自宅で静かに過ごせる環境があれば理想ですが、不安が強い方にはトイレ付きの個室や、落ち着ける院内スペースのあるクリニックがおすすめです。お気に入りの音楽をかけるなど、リラックスできる工夫を取り入れましょう。

前日の食事内容に注意する

大腸内視鏡検査の前日は、腸内をきれいに保ち、下剤の負担を軽減するために「食事の内容と量」に注意が必要です。以下に具体的な注意点と対策を整理しました。

注意点 対策
消化に良いものを摂取する 白米・うどん・食パン・豆腐・白身魚・卵焼きなど、胃腸に負担をかけない食材を選ぶ。調理法は「煮る・蒸す」など油を使わない方法が理想。
脂肪分の多い食事を避ける 揚げ物や脂身の多い肉、バター・クリーム系は消化に時間がかかり、腸内に長く残るため前日は控える。
食物繊維・種を多く含む食材を避ける ごぼう・海藻・きのこ・豆類・玄米・そば・全粒粉パン、種の多い果物(キウイ、トマトなど)は腸内に残りやすく、検査に支障をきたす。
食べ過ぎを避ける 消化に良いものでも量が多いと腸に残りやすい。前日は普段の8割程度に抑え、夜遅くの食事・間食も避けると効果的。

これらのポイントを押さえておくことで、下剤の効果が高まり、検査当日の腸内洗浄がスムーズに進みやすくなります。

下剤が飲みきれない…上手に飲むコツは?

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下剤を飲むときに大切なのは、少量ずつ時間をかけて飲むことです。

急いで飲むと胃に負担がかかり、気分が悪くなることがあります。

また合間に水やお茶などを飲むことで口の中をリセットでき、体への負担も軽減されます。

味が苦手な場合は以下のような工夫も効果的です。

  • 飴を舐めながら飲む
  • 氷で冷やして飲む
  • スポーツドリンクで割る
  • ストローを使って喉の奥に流し込む

上記のような方法で下剤の味が口全体に広がらないようにすれば、かなり飲みやすくなるでしょう。

下剤を飲み切れない場合は、ぜひ上記を試してみてください。

大腸内視鏡検査で用いられる下剤の種類と特徴

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大腸内視鏡検査で用いられる下剤には、主に6種類あります。それぞれの特徴を整理すると、以下の通りです。

名称 特徴・洗浄力 味・飲みやすさ 飲む量と方法 使用上の注意点
モビプレップ 洗浄力と飲みやすさのバランスが良い 梅風味+塩味、比較的飲みやすい 下剤1.5L+水0.75L(合計約2.25L) 腎疾患のある人は使用できない
ニフレック 安全性が高く、古くから使われている 塩レモン風味、やや薄味 2Lを約2時間で服用 飲む量が多く、負担に感じることも
サルプレップ 溶解済み・洗浄力が非常に高い レモン風味+苦味あり 下剤960ml+水またはお茶約2L 腎疾患の人は不可、脱水に注意
マグコロールP スポーツドリンク風味で飲みやすい 飲みやすく、冷やすと口当たり良好 1.8Lを1〜2時間で服用 腎機能に問題がある人は不可
ピコプレップ 最も少ない量で済むが洗浄力は弱め オレンジ味で非常に飲みやすい 下剤150ml×2回+水2.3L以上 洗浄力が弱く追加対策が必要、腎疾患不可
ビジクリア 錠剤タイプで味のストレスがない 錠剤のため味なし、ただし50錠服用 50錠+水約2Lを2〜2.5時間で服用 嚥下が苦手な人には不向き、心腎疾患不可

このように、下剤ごとに特性や注意点が異なるため、自身の体調や好みに合ったものを医師と相談して選ぶことが大切です。

大腸内視鏡検査の下剤に関するよくある質問

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大腸内視鏡検査の下剤に関するよくある質問をまとめました。

  • 便秘がひどい場合でも前日に下剤を飲むだけで大丈夫?
  • どうしても下剤が飲めない場合は?
  • 下剤を飲み忘れてしまった場合は?
  • 下剤を飲んでいる途中で吐き気や腹痛が起きたら?

ここでは上記4つの質問についてそれぞれ解説します。

便秘がひどい場合でも前日に下剤を飲むだけで大丈夫?

便秘がひどい場合、検査前日に服用する下剤のみでは効果が不十分なケースもあるため、早めにクリニックへ相談することが大切です。

便秘の程度に応じて、数日前から緩やかな下剤を服用する、検査食に切り替える、食物繊維を制限するなど事前の対策を行う場合があります。

また検査当日に追加の下剤を使用したり、必要に応じて浣腸などの処置を行うことで、検査の実施が可能となります。

どうしても下剤が飲めない場合は?

下剤の量や味が苦手でどうしても飲めないという方もいますが、その場合でも検査を受ける方法はあります。

現在は錠剤タイプや味が異なる下剤など選択肢が増えており、自分に合ったものを選ぶことが可能です。

どのタイプも受け付けない場合は、数日前からの食事制限と軽い下剤を使った事前処置を行ったうえで、検査当日に浣腸や洗腸などで腸内を整える方法もあります。

ただしこうした対応は時間と手間がかかるため、早めに医師に相談することが大切です。

下剤を飲み忘れてしまった場合は?

大腸内視鏡検査の精度は、腸内がしっかりと洗浄されているかどうかに大きく左右されます。

そのため下剤を飲み忘れてしまった場合には、そのまま検査を受けることはできません。

必ず検査を予定しているクリニックへ連絡し、指示を仰ぎましょう。

場合によっては、日程を変更して準備をやり直す必要があります。

下剤を飲んでいる途中で吐き気や腹痛が起きたら?

下剤を飲んでいる最中に吐き気や強い腹痛、アレルギーのような症状が出た場合は、無理に服用を続けずただちに中断してください。

そして、すぐに検査を予定しているクリニックに連絡しましょう。

まとめ

大腸内視鏡検査の下剤は、検査の精度を保つうえで欠かせないものですが、飲みにくさや排便回数の多さから「つらい」と感じる方が多いのが実情です。

とはいえ、現在では錠剤タイプや少量で済む下剤も登場しており、自分に合ったものを選べるようになっています。

さらに下剤の味を工夫したり、前日の食事内容に気をつけたりすることで、負担を減らすことも可能です。

下剤が心配な方は早めに医師に相談し、自分に合った服用方法を見つけておくことで、より安心して検査を受けられるでしょう。

えさか駅前にしごりおなかとおしりのクリニックでは、リラックスできるトイレ付き個室と完備しています。ほかの方に気兼ねなくトイレをご使用いただけます。

下剤を飲む間も人に見られることなくゆっくりと過ごせるため、人の目が気になる方やリラックスできる環境で下剤を飲みたい方は、ぜひ当院の大腸内視鏡検査をご検討ください。

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