大腸ポリープを放置するとどうなる?ポリープの種類や治療方法についても解説

大腸ポリープを放置するとどうなる?ポリープの種類や治療方法についても解説

大腸ポリープは種類によって将来的にがん化する可能性があるため、安易に放置してはいけません。特に腫瘍性ポリープの場合、大腸がんのリスクが高まるだけでなく、出血や腸閉塞などの合併症を引き起こすおそれもあります。

本記事では、ポリープの性質や放置によるリスクを明確にし、早期発見・早期治療の重要性を解説します。

この記事でわかること

  • 大腸ポリープの種類と見分け方(腫瘍性・非腫瘍性)
  • 放置によるリスク(がん化・出血・腸閉塞など)
  • 発見方法の違いと検査の精度
  • 代表的な切除方法の特徴と選び方
  • 再発を防ぐ生活習慣と食事のポイント

これらの知識を正しく理解し、適切なタイミングで検査や対策を行うことで、大腸ポリープのリスクを最小限に抑えることが可能です。

錦織 英知 先生
監修医師
錦織 英知先生(えさか駅前にしごりおなかとおしりのクリニック)
国立がん研究センター東病院 大腸骨盤外科にて、最先端の大腸・直腸がん手術に多数従事。その後、神戸の神鋼記念病院にて大腸外科医として活躍し、数多くの大腸・直腸がん手術を担当。さらに、大腸・直腸と密接に関わる「排便障害(便秘や便漏れなど)」に対する専門外来を立ち上げ、幅広い患者さんの診療にあたる。

大腸ポリープの種類を知ることが重要

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大腸ポリープは、性質によって『腫瘍性ポリープ』と『非腫瘍性ポリープ』の2つのタイプに分けられます。

それぞれ詳しく解説します。

腫瘍性ポリープ

腫瘍性ポリープとは、がんになる前段階の病変とされるタイプのポリープです。

特に『腺腫』と呼ばれるものが代表的で、大腸ポリープ全体の約80%を占めています。

腺腫には『管状腺腫』『絨毛腺腫』『管状絨毛腺腫』などの種類があり、特に大きさが10mmを超えるものや、形が整っていないものはがん化のリスクが高くなります。

腫瘍性ポリープは症状がないまま進行することが多いため、定期的に大腸内視鏡検査を受けることによって早期発見・切除することが大切です。

非腫瘍性ポリープ

非腫瘍性ポリープは、がん化のリスクがほとんどない良性のポリープです。

代表的な種類は以下の通りです。

非腫瘍性ポリープの種類 特徴
過形成性ポリープ 加齢などが原因で、粘膜が盛り上がってできる
炎症性ポリープ 大腸の炎症性疾患になった後に生じる
過誤腫性ポリープ 正常な粘膜が過剰に成長することで生じる

これらのポリープは腸の炎症や組織の異常成長が原因でできることが多く、腫瘍性のような危険性は基本的にありません。

ただし過形成性ポリープの中でも、特に大腸の右側にできるものにはごくまれにがん化するリスクがあります。

また、見た目では腫瘍性か非腫瘍性かの判別がつかないこともあるため、ポリープが発見された場合には内視鏡での切除や病理検査を行って、確実に分類・判断する必要があります。

大腸ポリープを放置する危険性

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大腸ポリープを放置すると、以下のような危険があります。

  • ポリープががん化する恐れがある
  • 大腸内で出血や腸閉塞を起こす恐れがある
  • ポリープが大きくなると内視鏡での切除が難しくなる

上記3つの危険性についてそれぞれ解説します。

ポリープががん化する恐れがある

前述したように、大腸ポリープの中でも『腫瘍性ポリープ』は、放置するとがん化するリスクがあるため注意が必要です。

特に腺腫は、最初は良性でも時間の経過とともに悪性化することがあり、がんの前段階(前がん病変)と位置づけられています。

がん化の可能性はポリープの大きさに比例しており、10mm以上では確率が急激に上昇し、20mmを超えるとがん化している可能性が高くなります。

また形がいびつなポリープは悪性の可能性があるため、特に注意が必要です。

大腸内で出血や腸閉塞を起こす恐れがある

大腸ポリープを放置すると、大腸内で出血や腸閉塞を起こす恐れがあります。

ポリープの表面が傷ついて出血を起こし、便に血が混じる『血便』として現れることがあるのです。

またサイズの大きなポリープは腸管内の通過を妨げるため、腸閉塞の原因にもなり得ます。

腸閉塞になると、激しい腹痛や吐き気などの症状が出ることがあり、緊急の治療が必要になります。

こうしたリスクを回避するためにも、便に異常を感じたときや検診で指摘を受けた場合は、早めに内視鏡検査を受けるようにしましょう。

ポリープが大きくなると内視鏡での切除が難しくなる

大腸ポリープは小さいうちに見つかれば、内視鏡で簡単に切除できることが多いです。

しかしポリープが大きくなると、内視鏡的切除が困難になり、外科手術が必要になるケースも少なくありません。

そうなると入院期間が長引いたり、体への負担が大きくなったりするため、早い段階で対応するのが望ましいです。

ポリープの成長は数年単位で進行するため、定期的に内視鏡検査を受けることで、ポリープを早期に発見し負担の少ない治療を選択できます。

大腸ポリープの発見方法

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大腸ポリープの発見方法は主に『便潜血検査』と『大腸内視鏡検査』の2つです。特徴、メリット・デメリット、精度・感度の目安を整理すると、以下の通りです。

検査方法 特徴 メリット デメリット 精度・感度目安
便潜血検査 便に混じった血液を検出するスクリーニング検査 ・簡便で安価

・自宅で実施可能

・検診に適している

・出血しないポリープは見つけにくい

・偽陰性

・偽陽性あり

・大腸がん:60〜80%

・腺腫:10〜50%

大腸内視鏡検査 内視鏡で大腸の粘膜を直接観察し、ポリープの発見・切除も可能 ・高精度で微小病変も確認可能

・検査中に治療も可能

・事前準備(下剤)が必要

・侵襲的で費用や時間がかかる

ほぼ100%の精度(病変に接触できれば)

便潜血検査は手軽で負担が少ない一方、出血しないポリープや早期がんを見逃す可能性があります。そのため、便潜血検査が陰性でも症状がある場合は注意が必要です。

大腸内視鏡検査は病変を直接観察でき、微小なポリープも発見・切除が可能です。過去にポリープを指摘された方や、便通異常がある方は、医師と相談して内視鏡検査を検討するとよいでしょう。

大腸CT検査(CTコロノグラフィー)は、非侵襲的かつ比較的短時間で腸全体を評価できる検査法です。特に内視鏡検査が困難な方や過去に内視鏡検査で不快感があった方に選択肢となります。

ただし、前処置(下剤の服用:大腸内視鏡検査ほど多量の下剤は不要)が必要である点や、ポリープが見つかってもその場で切除ができないため、結果によっては改めて内視鏡検査が必要となるケースもあります。

大腸ポリープの切除方法

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大腸ポリープの代表的な切除方法として、以下の3つが挙げられます。

大腸ポリープの切除方法 特徴
ポリペクトミー ワイヤー状の器具をポリープの根元に引っかけて締め付け、高周波電流によって焼き切る方法
内視鏡的粘膜切除術(EMR) ポリープの下に生理食塩水を注入して浮かせ、スネアをかけて高周波電流で焼き切る方法
内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD) 粘膜下層に薬液を注入して浮かせ、専用の電気メスで周囲の粘膜を切開して病変を切除する方法

上記3つの切除方法について詳しく解説します。

ポリペクトミー

ポリペクトミーは、大腸ポリープの切除に用いられている基本的な方法です。

電流によって出血を抑える止血効果も得られるため、安全性が高いとされています。

また、近年では電気を使わずにスネアだけで切除する『コールドポリペクトミー』も増えており、出血や穿孔のリスクをさらに低く抑えることが可能です。

小さなポリープであれば、検査中にそのまま日帰りで切除できるケースがほとんどで、患者さんの身体的負担も少ないのが大きなメリットです。

内視鏡的粘膜切除術(EMR)

内視鏡的粘膜切除術(EMR)は、ポリペクトミーでは対応しにくい、平坦で茎のないタイプの大腸ポリープに適した切除方法です。

生理食塩水を注入することでポリープと腸の深部組織との間に空間ができるため、熱の影響が下層まで及びにくく、穿孔などのリスクを軽減できます。

内視鏡検査と同時に処置できる点も、EMRの大きなメリットといえるでしょう。

内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)

内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)は、特に大きな平坦型ポリープやEMRでは取り切れない病変に対して行われる切除方法です。

スネアを使用せず直接メスで剥離・切除するため、病変のサイズや形状にかかわらず、広範囲をまとめて切除できるのが特徴です。

大腸ポリープの予防方法

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大腸ポリープを予防するポイントは以下の通りです。

  • 食事内容に気を付ける
  • 腸の健康に良い生活習慣を心がける
  • 定期的に検査を受ける

ここでは上記3つのポイントについてそれぞれ解説します。

食事内容に気を付ける

大腸ポリープを予防するためには、食事内容に気を付けることが大切です。

特に注意すべきなのは、赤身肉や加工肉、高脂肪・高カロリーな食事の摂りすぎです。

これらは腸内に有害な物質を発生させ、ポリープやがんのリスクを高めるといわれています。

代わりに野菜や海藻、きのこ類、豆類などに多く含まれる食物繊維を積極的に摂り、腸内環境の改善と健康的な便通を目指しましょう。

また、乳酸菌やビフィズス菌などの善玉菌を含む発酵食品も効果的です。

無理に食事制限をするのではなく、バランスの取れた食事を意識しましょう。

腸の健康に良い生活習慣を心がける

腸の健康を保つためには、毎日の生活習慣の積み重ねが鍵を握ります。

具体的に以下のような生活習慣を心がけるとよいでしょう。

  • 1日3食、栄養バランスの整った食事をとる
  • ウォーキングやストレッチなどの軽い運動をする
  • 便意を感じたら我慢せずトイレに行く
  • 喫煙や過度な飲酒は控える

朝食をしっかり摂り、排便のタイミングを整えることも重要です。

特に朝食後の時間に余裕をもち、便意を感じたら我慢せずトイレに行く習慣をつけましょう。

日々の小さな意識の積み重ねが腸の健康につながるため、ぜひ今日から意識してみてください。

定期的に検査を受ける

大腸ポリープは初期段階ではほとんど自覚症状がないため、定期的に検査を受けることが早期発見・早期治療につながります。

特に40歳を過ぎたら、大腸内視鏡検査や便潜血検査を定期的に受けましょう。

すでにポリープを切除した経験がある方は、再発リスクがあるため、医師の指示に従って定期的に検査を続けてください。

また家族に大腸がんの既往がある場合は、遺伝的リスクがあるため、若い年齢でもなるべく早めに検査を受けることをおすすめします。

大腸ポリープについてのよくある疑問

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ここでは、大腸ポリープに関するよくある疑問にお答えします。

Q:大腸ポリープが見つかったのに切除しない理由は?

大腸ポリープが見つかっても、すぐに切除しない場合もあります。

その理由は、すべてのポリープががんに進行するわけではないためです。

特に3mm以下の小さな過形成性ポリープは、がん化のリスクが非常に低いため、経過観察で済ませる場合が多いです。

またポリープを切除する際には少なからず出血や穿孔といった合併症のリスクがあるため、患者さんの年齢、健康状態、ポリープの性質や位置などを総合的に考慮して、切除の是非を判断します。

さらに現在の医療では、そのポリープが将来がん化するかどうかを完全に見極めることはできません。

したがって、医師は患者さんの状態やリスクを見極めたうえで、切除が本当に必要かどうかを慎重に判断しているのです。

不安がある場合は、今後の検査方針について担当医とよく相談してください。

Q:大腸ポリープが自然消滅することはある?

大腸ポリープが自然に消えてなくなることは基本的にはありません。

悪性でないポリープであれば、ただそこに存在し続けるのみです。

症状がなく、リスクが低いと判断されるポリープであれば、無理に治療する必要はありません。

ただし、自己判断で放置するのは危険です。

定期的に内視鏡検査を受けて、ポリープの大きさや状態に変化がないかを確認し、必要に応じて医師と適切な対応を検討してください。

まとめ

大腸ポリープは種類や大きさによって、放置しても問題のないものから、がん化のリスクが高く早期切除が望ましいものまでさまざまです。

自己判断で放置するのは危険なため、医師の診断に基づいて適切な対応をとることが何より重要となります。

将来的な大腸がんの予防のためにも、「見つけたら放置しない」という意識を持つことが大切です。

えさか駅前にしごりおなかとおしりのクリニックでは、大腸内視鏡検査や大腸CT検査を行っています。

大腸ポリープ切除は日帰りでも可能なため、検査を検討中の方はぜひ当院までご相談ください。

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