大腸ポリープは、50歳以上・家族に大腸がんの既往がある人・食生活や生活習慣が乱れている人にできやすい傾向があります。
こうした背景を理解しておくことで、将来的な大腸がんリスクへの備えや検査のタイミングを見極めやすくなります。
本記事では、大腸ポリープのリスク要因や予防・対処法について、信頼性の高いデータに基づき詳しく解説しています。
◉本記事でわかること
- 大腸ポリープの発生頻度と腫瘍の種類
- 遺伝・年齢・食生活など、ポリープができやすい人の特徴
- 血便・便秘・下痢など、大腸ポリープの症状一覧
- 大腸ポリープを放置するリスクとがん化の可能性
- 大腸内視鏡による発見・切除の流れと術後の注意点
- 食事・生活習慣でできる予防策とセルフチェックリスト
自覚症状がなくても、知らないうちに進行していることもあるため、「できやすい条件」に当てはまる方は、早めの検査を検討しましょう。
大腸ポリープは珍しくない病気
大腸ポリープとは、大腸の内側表面の一番浅い層(粘膜層)の一部がイボのように隆起した腫瘍のことを指します。
大腸内視鏡検査を受けた人のうち、およそ40%、約5人に2人がポリープを持っていると言われています。
そして大腸ポリープは、組織や構造によって『非腫瘍性』と『腫瘍性』に分けられます。
- 非腫瘍性ポリープ
- 過形成性ポリープ
- 炎症性ポリープ
- 過誤腫性ポリープ
- その他
- 腫瘍性ポリープ
- 悪性腫瘍(大腸がん)
- 良性腫瘍(腺腫)
非腫瘍性ポリープができる原因は加齢や炎症によるもので、大きいものでなければ治療は必要ありません。
しかし大きさが2cmを超えるとがん化のリスクが50%まで高まるため、5mm以上の小さいポリープのうちに切除することが強く推奨されています。
一方、腫瘍性ポリープは大腸がんか良性腫瘍と呼ばれる腺腫です。
発見される大腸ポリープの約8割が良性腫瘍であり、がん化のリスクが高いため、小さくても切除が必要です。
大腸ポリープの発生頻度が高くなる40歳以降は、早期の発見・治療につなげるために、大腸内視鏡検査を積極的に受けましょう。
大腸ポリープができやすい人は?その原因は?
大腸ポリープがどのような人にできやすいか、原因が何かを知っていれば、早期発見や予防につなげられるでしょう。
大腸ポリープができやすい人やその原因を解説します。
遺伝が原因の人
大腸がんや大腸ポリープは、遺伝が関与しているケースもあります。
家族や血縁に大腸がんの人がいる場合、大腸がんのリスクは通常より2〜3倍ほど高まるといわれています。
また、大腸がんを引き起こす遺伝性の病気に『家族性大腸腺腫症』と『リンチ症候群』があります。
家族性大腸腺腫症は、多数の腺腫性ポリープが形成される遺伝性疾患です。
40歳で約50%の人が大腸がんを発症し、放置すると60歳頃にはほぼ100%が発症します。また、10代でも大腸がんを発症することがあります。
リンチ症候群は一般の人より大腸がんをはじめさまざまな悪性腫瘍を発症しやすい病気です。
50%の確率で親から遺伝し、若年で大腸がんや子宮体がんを発症します。
遺伝的な要因がある場合、できるだけ若いうちから大腸内視鏡検査を受けておくことが大切です。
50歳以上の人
50歳以上になると、加齢に伴って細胞分裂時の異常が蓄積しやすくなるため、大腸ポリープができやすくなります。
また、加齢で腸の働きが鈍くなり、老廃物が溜まりやすくなって腸の粘膜に負担をかけることもポリープの原因のひとつです。
ポリープの成長は比較的遅く、5年程で倍のサイズになるとされています。
50代で発見されるポリープは40代から成長していると考えられるため、症状のない早いうちからの検査が重要です。
食生活が偏っている人
高たんぱく・高カロリーな食事を摂っている人は大腸ポリープができやすいと考えられています。
大腸ポリープができる人の割合は、日本人の食事が欧米化し、動物性たんぱく質や脂質の量が増えてくるにつれて増加しています。
特に赤身肉や加工肉を摂り過ぎることが大腸がん・大腸ポリープの発生リスクと関係しているとされています。
また、食物繊維が不足していると排便が遅れ、大腸内に便が滞留することにより大腸に負担がかかることも、ポリープを発生させる原因です。
飲酒・喫煙習慣のある人
飲酒や喫煙習慣も、ポリープが発生する原因の一つです。
アルコールは胃で約20%、小腸で約80%が吸収されるため、飲酒する習慣があると消化液が増加し神経が過敏になります。
また、タバコには有害物質が含まれ、大腸の細胞にダメージを与えます。
これらのような大腸に負担をかける習慣が、ポリープの増加につながります。
運動不足の人
運動不足の人は、ポリープの発生に気をつけましょう。
運動不足は、代謝を低下させたり腸の動きが鈍くなったりするため、便秘になりやすくなります。
運動不足は肥満にもつながるため、適度な運動を取り入れましょう。
内臓脂肪型肥満の人
内臓脂肪が多い男性は大腸ポリープが見つかりやすく、また、中性脂肪が高いと大腸ポリープができやすいという報告もあります。
東京大学消化器内科:磯村好洋氏の第16回日本消化器関連学会週間の発表により、内臓脂肪が多いと高確率で大腸ポリープが見つかることが発表されています。
肥満の場合に脂肪細胞から分泌されるホルモンの働きが大腸がんのリスクを高めるとされているため、体重管理をすることでのリスクの抑制が必要です。
高血圧・糖尿病・脂質異常症の人
高血圧・糖尿病・脂質異常症は、それぞれ別の病気ですが、以下のような報告や研究発表がされています。
- 高血圧(重症)……内服している降圧薬に大腸ポリープ発症のリスクがある
- 糖尿病患者……罹患していない人に比べると大腸がんに罹患するリスクが高い
- 脂質異常症……血中の中性脂肪の濃度が高い場合に、大腸ポリープが発症しやすくなる
どれも生活習慣病に分類される病気で、大腸ポリープが生活習慣に大きく影響されることが分かります。
大腸ポリープの症状
大腸ポリープは小さいうちは症状がほぼありませんが、大きくなると症状が出てきます。
ここでは、大腸ポリープの症状について紹介します。
血便
大腸ポリープがある場合によく見られる症状が血便です。ポリープが大きいほど出血しやすい傾向にあります。
ポリープが肛門近くにある場合、便が擦れることで出血することもあります。ポリープが原因の場合、便の色は暗めの赤〜鮮やかな赤です。
また、便に血が混じる・便全体が黒いなど、その様子は一様ではなく、大腸がんなど重篤な疾患が隠れている場合もあります。
目視できない出血の場合でも便潜血検査で発見できるため、まずは消化器内科を受診しましょう。
便秘
大腸ポリープが腸を塞ぐために便秘が起こることがあります。
大腸ポリープが原因の場合は便秘と下痢を繰り返すのが一般的ですが、便秘だけが続く場合は以下の病気の可能性があります。
- 大腸がん
- 腸閉塞
- 腸管癒着
- 排便機能の異常
これら以外にも考えられる病気があるため、早めに受診して診断してもらいましょう。
下痢
大腸ポリープができる部位によっては、腸の働きが妨げられ下痢の症状が出ることがあります。
下痢だけが続く場合は、感染する病気かどうかの診断が必要です。
また、下痢が続く場合は過敏性腸症候群の可能性も考えられます。
過敏性腸症候群は完治が難しいといわれているものの、適切な治療によって症状の軽減は図れるため、早めに消化器内科に相談しましょう。
腹痛
大腸ポリープで腹痛が現れる場合がありますが、腸の内側の粘膜には痛覚がないため、腸自体は痛みを感じません。
しかし、大腸ポリープができて腸の流れが悪くなることで、腸管壁が引き伸ばされて痛みを感じる場合があります。
特に排便時に痛むことが多く、引き伸ばされているのがS状結腸であることが多いため、お腹の左下が痛みます。
小さい場合は無症状の場合も
上述したように、大腸ポリープは小さいうちには自覚症状がなく、見つかる際は便潜血検査や大腸内視鏡検査で偶然に見つかることが多いです。
しかし、陥凹型と呼ばれる窪みのあるポリープの場合、10mm以下の小ささでもがんである場合が多く、成長速度も早いとされています。
大腸がんは早期発見・早期治療ができれば完治を目指せる病気であるため、積極的に検査を受けることが大切です。
大腸ポリープを放置するリスク
すぐに治療が必要な症状が見られないからといって、大腸ポリープを放置することは大変危険です。
大腸ポリープを放置するリスクについて紹介します。
大腸がんに進展する危険性
大腸ポリープのいくつかは大腸がんに進展する危険性があります。
大腸ポリープのうちの約80%は良性腫瘍ですが、がん化のリスクが高いといわれています。
症状がない初期の時点で検査できればいいのですが、もし少しでも症状に心当たりがあるなら、速やかに検査することを強くおすすめします。
出血や貧血
大腸ポリープが大きくなると、大腸内の血管を圧迫したり傷をつけたりすることがあります。
また、便が通過する際に擦れて出血したり、それを原因として慢性的に出血したりする場合もあります。
特に、大腸がんに進展した場合、病変部からゆっくり時間をかけて出血する場合が多いといわれています。
排便時に出血が見られる場合や、ふらつきやめまいなど貧血症状がある場合は、早めに相談しましょう。
大きくなる・悪性腫瘍に変化する
大腸ポリープは放置すると成長して大きくなり、大腸がんのリスクが高まることがありますが、非腫瘍性ポリープもそのうちの一部は、大きく成長して悪性化してしまう可能性があります。
大腸ポリープが小さく、がん化のリスクが少ないうちに切除してしまうことが大切です。
大腸内視鏡検査で大腸ポリープを発見・削除する
大腸内視鏡検査は、大腸ポリープの発見も切除もできます。
ここでは、大腸内視鏡検査で行う発見と切除の方法について紹介します。
大腸ポリープの発見方法
大腸ポリープを直接観察できる唯一の方法が大腸内視鏡検査(大腸カメラ検査)です。
つらい・苦しいといったイメージを持たれがちですが、最近の大腸内視鏡検査は鎮静剤を用いることで、リラックスした状態で検査を受けられるようになっています。
大腸ポリープの発見方法は他にも以下の検査方法があります。
- 便潜血検査
- 大腸透視検査(バリウムと空気を肛門から入れて検査)
- 大腸CT
便潜血検査は簡便な検査方法ではあるものの感度が低く、大腸ポリープを見逃してしまう可能性があります。
そのため、大腸ポリープの診断には主に大腸内視鏡検査が用いられます。
大腸ポリープの切除方法
大腸ポリープは、大腸内視鏡で切除します。以下は切除方法です。
- ポリペクトミー……高周波の電流で焼き切り
- コールドスネアポリペクトミー……スネア(輪状の装置)で締め付けて切除
- 内視鏡的粘膜切除術(EMR)……平たいポリープを高周波電流で焼き切る
- 内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)……平たいポリープを電気メスで切開
大腸ポリープには茎のあるものやないもの、平らなもの、凹んでいるものなどがあり、病変の形状や大きさによって切除方法を選択します。
術後の注意点
大腸ポリープを切除した後は、大腸内に潰瘍ができた状態になっています。
傷は自然に治りますが、2日〜1週間程度は術後出血が起こる場合があるため安静に過ごしましょう。
術後の注意点は以下の通りです。
- 当日はシャワーのみ、入浴は翌日から
- 3日程、出血を防ぐ薬を服用
- 1週間は禁酒・消化の良いものを摂る
- 1週間ほど、力仕事・激しい運動を控える
- 1週間は長時間の車の運転・飛行機での旅行を控える
クリニックによって違いがあるかもしれませんが、医師の指示にきちんと従いましょう。
大腸ポリープを予防する食事
大腸ポリープを予防するためには、バランスのよい食事の他に、ビタミンDを含む食材として、卵を毎日の食事に取り入れましょう。
ビタミンDは熱に強い性質があるため、ゆでたり焼いたり、もちろん生でも、お好みのどんな料理方法でもOKです。
他には、食物繊維摂取量の減少が大腸ポリープ増加の一因とされているため、食物繊維を意識して摂りましょう。
また、肉類(赤身)や加工肉・高カロリー食の摂取を減らすことも大切です。
自分のリスクは高い?セルフチェックリスト
以下は、大腸ポリープがある場合のセルフチェックリストです。
ポリープが小さいうちは一般的に症状は出ませんが、大きくなってきたり肛門近くにできたりすると以下のような症状が見られることがあります。
- 便潜血検査で陽性が出た
- 血便が出た
- お腹が張る・おならが出る
- 貧血がある
- 腹痛・吐き気
- 下痢と便秘を繰り返す・続く
- 便が細くなった
- 粘液便が出る
- お尻から出血がある(下血)
- 以前に大腸ポリープが見つかったことがある
この中に一つでも心当たりがある場合や、特に血便や腹痛が続く場合は、他の病気の可能性もあるため、放置せずになるべく早めに医師に相談しましょう。
まとめ
大腸ポリープは珍しくない病気ですが、放置していい病気ではありません。
大腸がんは、症状を自覚した時には進行している事が多く、早期発見が大切な病気です。
大腸の不調は生活の質まで低下させてしまいます。何も症状がなくても、40歳を過ぎたら積極的に検査へと行動しましょう。
大腸内視鏡検査を検討中の方は、えさか駅前にしごりおなかとおしりのクリニックに是非一度ご相談ください。