おならが硫黄臭い原因は大腸がん?他の原因や対処法についても解説

おならが硫黄臭い原因は大腸がん?他の原因や対処法についても解説
錦織 英知 先生
監修医師
錦織 英知先生(えさか駅前にしごりおなかとおしりのクリニック)
国立がん研究センター東病院 大腸骨盤外科にて、最先端の大腸・直腸がん手術に多数従事。その後、神戸の神鋼記念病院にて大腸外科医として活躍し、数多くの大腸・直腸がん手術を担当。さらに、大腸・直腸と密接に関わる「排便障害(便秘や便漏れなど)」に対する専門外来を立ち上げ、幅広い患者さんの診療にあたる。

「おならが硫黄のような臭いがする……これって大腸がんのサイン?」と不安になる方も少なくないでしょう。しかし、おならの臭いだけで大腸がんかどうかを判断することはできません。とはいえ、1週間以上臭いが強く続く場合や、他の症状を伴う場合には注意が必要です。

本記事では、硫黄臭いおならと大腸がんの関係について、医学的な観点からわかりやすく解説します。

この記事でわかること

  • 硫黄臭いおならと食事・腸内環境との関係性
  • 大腸がんとおならの臭いの関係と注意すべき症状
  • おならが臭くなる原因とその背景にある疾患
  • 臭いが強いときの具体的な対処法とセルフケア
  • 医療機関を受診すべきタイミングの見極め方

おならの臭いの変化を通じて体調のサインを見逃さず、必要に応じて適切な対応をとることが大切です。

硫黄臭いおならと大腸がんの関係性

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おならがゆで卵のように硫黄臭いだけでは、大腸がんと断定することはできません。

おならの臭いは、食べた物や腸内細菌のバランス、消化吸収の状態などに大きく左右され、一時的な変化である可能性があるためです。

例えば卵や肉類、チーズなどを多く食べた後には、含硫アミノ酸の影響で硫化水素が発生し、臭いが強くなることがあります。また、にんにくやたまねぎ、キャベツなどもガスの臭いを強める食材です。

このような食事による変化であれば、特に心配はいりません。

しかし臭いに加えて、便秘や下痢、血便、便が細くなるなどの症状が現れている場合は気をつけなければなりません。

過敏性腸症候群や慢性胃炎といった消化器のトラブルでも、ガスの発生が増えることがあります。

重要なのは、臭いの変化だけで自己判断せず、体調の変化を総合的に見て判断することです。

おならの異常が1週間以上続く場合は注意

硫黄臭いおならが1週間以上続く場合は、消化器系に何らかの異常が起きている可能性を考えるべきです。

特に、食事内容を改善しても卵の腐った臭いが続くようであれば、腸内環境の異常や炎症、大腸がんなどの病気が背景にあるかもしれません。

早期段階の大腸がんではほとんど症状がありませんが、進行すると便秘や下痢、便が細くなる、血便、残便感、貧血、腹痛などの症状が現れます。

これらの症状が硫黄臭いおならと併発している場合は、なるべく早めに医療機関を受診することが勧められます。

一時的な食べ過ぎや腸内細菌の乱れが原因であれば、2~3日で改善することがほとんどです。

長期間異臭が続く場合は、検便や大腸内視鏡などによる検査を受け、大腸がんや他の消化器疾患の早期発見につなげましょう。

大腸がんの初期症状

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初期の大腸がんはほとんど自覚症状がないものの、次のような症状が現れたら注意しましょう。

自覚症状 症状の詳細
血便 便に鮮血や暗赤色の血が混じる。右側結腸では血が黒っぽくなり、左側結腸と直腸では赤くなる
便が細くなる 通常よりも便が細くなることで、腸管の狭窄を示す場合がある
腹痛 がんが腸の通り道を妨げることにより、腹痛が生じることがある。腸の動きに合わせて現れたり治まったりを繰り返す
腹部膨満感 がんが腸の通り道を妨げることにより、お腹の張りやガスが溜まりやすくなる感覚が生じる
下痢や便秘を繰り返す がんによって腸が狭くなることで、便秘と下痢を繰り返す場合がある
排便後の残便感 長時間便が腸内に留まることで水分が吸収されて硬くなり、コロコロとした便になったり、排便後に残便感が生じることがある
体重減少 がん細胞から分泌されるタンパク質によって食欲が低下し、脂肪や筋肉が分解されることで体重が急激に減少することがある
貧血 がんから慢性的な出血が生じることで、貧血に陥ることがある

特に便通異常は大腸がんの初期段階で現れることが多いため、たとえ一過性のものであっても、なるべく早めに医師の診察を受けることが大切です。

また、大腸がんの発生部位によっても症状の出方は異なります。

S状結腸や直腸など便が固まりやすい部位では、血便や腹痛などが現れやすくなるのです。

一方、盲腸や上行結腸などでは目立った腹部症状が出にくく、貧血や体重減少といった全身症状で気づかれることもあります。

少しでも体の異変を感じたら、医療機関を受診しましょう。

おならが硫黄臭くなる原因

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おならが硫黄臭くなる原因として、以下が挙げられます。

  • 添加物・肉類ばかり食べている
  • 腸内環境が悪化している
  • 不規則な生活
  • ストレス
  • 病気の影響

上記5つの原因について、それぞれ解説します。

添加物・肉類ばかり食べている

肉類や加工食品を中心とした食生活は、おならが硫黄臭くなる原因の一つです。

赤身肉や卵、チーズなどには『含硫アミノ酸』が多く含まれており、これが腸内で分解されると硫化水素が発生し、ゆで卵のような強い臭いを伴うおならにつながります。

さらに加工食品に含まれる食品添加物や亜硫酸塩などの成分も、硫化物として体内に取り込まれ、ガス発生に影響を与える可能性があります。

過剰摂取が続くと腸内で悪玉菌が増えやすくなり、より強烈な臭いが発生しやすくなるため注意が必要です。

腸内環境が悪化している

腸内環境が悪化すると、善玉菌よりも悪玉菌が優勢になり、硫黄臭の強いおならが出やすくなります。

悪玉菌はたんぱく質などを腐敗させる過程でアンモニアや硫化水素、インドール、スカトールなどの臭い成分を作り出します。

これらはごく微量でも強い悪臭を放つため、おならの臭いが急にきつくなったと感じる原因になるのです。

腸内フローラのバランスが崩れる原因としては、食生活の乱れや運動不足、ストレスの蓄積などが挙げられます。

整腸作用のある食品を意識的に取り入れ、腸内環境の改善を目指すことが大切です。

不規則な生活

不規則な生活リズムは自律神経の乱れを引き起こし、腸の働きに悪影響を与えます。

睡眠不足や食事の時間がバラバラな状態が続くと、腸のぜん動運動が乱れ、消化不良や便秘が起こりやすくなるのです。

こうした状態では腸内にガスが溜まりやすくなり、そのガスが長時間腸内にとどまることで硫黄臭を伴うおならが出やすくなります。

また夜型の生活や深夜の食事も腸内の悪玉菌を増やす原因になり得ます。

おならの臭いが気になる方は、まずは毎日決まった時間に起きる、3食をできるだけ同じ時間に食べる、などの規則正しい生活を心がけることが大切です。

ストレス

ストレスは消化器系に大きな影響を与える要因の一つで、おならの臭いにも関係しています。

ストレスがたまると自律神経が乱れ、腸の動きが鈍くなったり、逆に過剰に働いたりして消化不良を起こしやすくなります。

その結果、腸内に未消化物が長く留まり、悪玉菌が活性化して硫黄臭や腐敗臭の原因となる腐敗ガスが発生してしまうのです。

適度に運動をする、趣味の時間を確保するなど、ストレスをため込まない工夫をすることが大切です。

病気の影響

おならの臭いが極端に強く、長期間にわたって改善しない場合、病気の可能性も視野に入れる必要があるでしょう。

特に大腸がんや過敏性腸症候群、クローン病、潰瘍性大腸炎といった腸に炎症や異常をきたす病気では、腸内環境が大きく乱れて異常なガスが発生しやすくなります。

大腸がんの場合は、がんによって腸が狭くなることで便秘とガスの滞留が進み、硫黄臭の強いおならが続くことがあります。

腸内細菌のバランスも大きく崩れるため、臭いがきつくなるのです。

便の変化や腹痛、血便、体重減少など他の症状を伴う場合は、早めに医療機関を受診し、内視鏡検査などの精密検査を受けることが大切です。

おならを伴う病気

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おならを伴う主な病気は、以下の4つです。それぞれの原因や特徴、症状の例を整理しました。

病名 主な原因・特徴 おならとの関係 症状の例
大腸がん 腫瘍による腸の狭窄や内容物の停滞 ガスが溜まりやすくなり、腐敗臭を伴うことがある 血便、便秘、腹痛、体重減少、貧血
過敏性腸症候群 ストレスや自律神経の乱れによる腸の過敏な反応 ガスが多く発生し、膨満感や悪臭を伴うことがある 腹痛、便秘または下痢、残便感、腹鳴
慢性胃炎 ピロリ菌感染や過労・ストレスなどによる胃粘膜の炎症 消化不良により腸で発酵が進み、ガスが増えることがある 胃もたれ、げっぷ、吐き気、胸やけ
呑気症 無意識に空気を飲み込む習慣(早食い・緊張など) 飲み込んだ空気が腸に達し、おならの量が増える げっぷ、腹部膨満感、不安感など

おならの変化には、思わぬ病気が隠れていることもあります。単なる体調の一時的な変化と見過ごさず、気になる症状が続く場合は医療機関での相談を検討しましょう。

便秘じゃないのにおならが臭い理由

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おならが臭くなる原因の一つに便秘が挙げられますが、便秘じゃないのにおならの臭いが強くなることがあります。

その理由は主に以下のようなものです。

  • 肉類やニンニクなどの食品を過剰に摂取している
  • 胃腸の機能が低下している
  • ストレスや睡眠不足による自律神経の乱れ
  • 炭酸飲料やビールなどの発泡飲料をよく飲んでいる
  • 喫煙や禁煙直後

上記のように食生活の偏りや腸内環境の乱れ、ストレス、生活習慣などが複雑に影響してガスが発生・悪化することがあります。

特定の食品を多く摂っていないか、日々の生活リズムが乱れていないかなど、一度自身の生活を振り返ってみることが大切です。

また臭いが長く続いたり他の症状(腹痛・血便・体重減少など)が現れたりする場合は、医療機関の受診も検討しましょう。

おならが硫黄臭いときの対処法

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おならが硫黄臭いときの対処法として、以下の5つが挙げられます。

  • 栄養バランスの整った食事をとる
  • 十分な睡眠と適度な運動を心がける
  • ストレスをため込まない
  • 整腸薬を服用する
  • 医療機関を受診する

上記5つの対処法についてそれぞれ解説します。

栄養バランスの整った食事をとる

◎ポイント

  • 動物性たんぱく質の摂りすぎを避ける
  • 食物繊維を積極的に摂取する
  • 発酵食品(乳酸菌・ビフィズス菌)を活用

硫黄臭いおならを改善するには、栄養バランスの取れた食事が基本です。肉類など動物性たんぱく質の過剰摂取は、腸内の悪玉菌を増やし、硫化水素やアンモニアといった臭いガスの原因になります。

一方、野菜や海藻、きのこに含まれる食物繊維は、善玉菌のエサとなり、腸内環境を整える効果が期待できます。加えて、ヨーグルトや納豆などの発酵食品も、臭いの軽減に役立ちます。

十分な睡眠と適度な運動を心がける

◎ポイント

  • 睡眠によって自律神経を整える
  • 軽い運動で腸の動きを活性化
  • 習慣化がカギ

自律神経の乱れは腸の働きに影響を与え、ガスの溜まりやすい状態を招きます。十分な睡眠を確保し、毎日のリズムを整えることが腸の活性化につながります。

また、ウォーキングやヨガ、ストレッチなどを取り入れ、腸のぜん動運動を促すことも大切です。継続することで腸内環境の改善が期待できます。

ストレスをため込まない

◎ポイント

  • ストレスは腸の動きを抑制
  • リラックス時間を意識的に確保
  • 趣味や呼吸法で緊張緩和を

ストレスが続くと、自律神経が乱れ腸の働きが鈍くなり、ガスの排出がうまくいかなくなることがあります。お気に入りの趣味に打ち込んだり、深呼吸や軽いストレッチで心身をほぐしたりすることで、腸の機能をサポートできます。

整腸薬を服用する

◎ポイント

  • 乳酸菌やビフィズス菌配合の整腸薬を選ぶ
  • プレバイオティクスも含む製品が理想
  • 食事での改善が難しい人に適す

腸内バランスの調整には、市販の整腸薬を取り入れるのも有効です。善玉菌を増やす成分が含まれた整腸薬は、腸内環境の改善に役立ちます。プレバイオティクス(オリゴ糖や食物繊維)と併せて摂取することで、より高い効果が見込めます。

医療機関を受診する

◎ポイント

  • 硫黄臭が長期間続く場合は受診
  • 血便や腹痛などの症状があるときは注意
  • 消化器疾患が隠れている可能性も

臭いの強いおならが長く続く、または血便・腹痛・体重減少などの異常が伴う場合は、速やかに医療機関を受診してください。大腸がんや過敏性腸症候群などの可能性も否定できず、専門医による検査が必要です。

おならと大腸がんに関するよくある質問

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おならと大腸がんに関するよくある質問をまとめました。

  • 硫黄臭いおならが続くときの受診目安は?
  • 20代・30代でも大腸がんになる?
  • おならがたくさん出る原因は?

ここでは上記3つの質問についてそれぞれ解説します。

硫黄臭いおならが続くときの受診目安は?

硫黄臭いおならが数日続くだけであれば、食事内容や腸内環境の一時的な乱れによるものであることが多く、あまり心配はいりません。

しかし、臭いの強いおならが1週間以上継続し、さらに下痢・便秘・血便・体重減少・お腹の張りといった症状を伴う場合は、大腸がんなどの病気の可能性もあるため早めの受診が推奨されます。

特に40歳を超えている方は、大腸内視鏡検査を受けてポリープや病変がないか確認すると安心です。

20代・30代でも大腸がんになる?

大腸がんは中高年に多いとされますが、20代・30代で発症するケースも近年増加しています。

特に、遺伝的要因や炎症性腸疾患を持つ方はリスクが高まります。

また肉類・加工肉中心の食生活、飲酒・喫煙、肥満、運動不足などの生活習慣も大腸がんのリスク因子とされており、若い方でも注意が必要です。

便に異常がある、腹痛が続くといった症状がある場合は、年代に関係なく医療機関を受診しましょう。

おならがたくさん出る原因は?

おならがたくさん出る原因には以下のようなものが挙げられます。

  • 食物繊維の食べ過ぎ
  • 動物性食品の食べ過ぎ
  • 炭酸飲料の飲み過ぎ
  • 早食い
  • 腸内環境の悪化
  • 禁煙
  • 病気(過敏性腸症候群、慢性胃炎、呑気症など)

おならが頻繁に出る原因の多くは、食事内容や生活習慣に関係しています。

食物繊維や動物性食品をとり過ぎていないかを見直し、腸内環境を整えることが大切です。

症状が気になるときは、医療機関への相談を検討しましょう。

まとめ

おならが硫黄のように臭くなるのは主に食事や腸内環境の影響によるものですが、臭いの変化が長期間続く場合や他の症状を伴うときは、大腸がんなどの病気が隠れている可能性もあります。

大腸がんは初期段階では自覚症状がほとんどないため、臭いや便の異常が続く場合には、早めに医療機関で検査を受けることが大切です。

えさか駅前にしごりおなかとおしりのクリニックは、総合病院並みのCT検査や内視鏡検査を行える設備が整っています。

大腸内視鏡検査にも対応しているため、おならの臭いやおなかの症状でお悩みの方は、ぜひ当院までご相談ください。

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